◆小花作助とは
小花作助は、小普請組に属する下級の御家人でしたが、外国方に登用されてから頭角を表し、その働きが認められて小笠原回収事業に加わりました。ジョン万次郎も通訳として同行しました。小花は小笠原上陸後、父島に在島し現地責任者として小笠原開拓の先頭に立ちました。 帰還後は外国奉行組頭に立身して開港事務に当たり維新を迎えました。明治初年、小笠原島の事情が知らされ領有回復が論議されると、その事情に精通した小花作助(新政府に登用)の提言が注目され、同じ旧幕臣出身の田辺太一の推挙で調査団の一員に加わります。 明治7年、小笠原の開拓事業再開が英米諸国に通告され、英国などの強い反対を押し切り日本政府・内務省直轄になりました。小笠原島出張所が父島に設けられ、その初代所長に抜擢されたのが小花作助です。
◆小笠原島要録とは
小花は、在任期間中に本国政府と取り交わした全ての公文書の控えを作成していました。
欧米ハワイ系の島民の動向を逐一記録し内地に報告した「笠島記事」、明治6年以降の官民来島者全員の氏名やその出自などに関する記録は特に貴重です。
この他にも、明治以前の本諸島に関係する記録、島内の物産や動植物調査結果、移住民の実態報告、発生する事件への対応、生活物資輸送のための船舶確保、西南戦争に伴う小笠原の孤立化と食糧確保、島規則の整備、島内産業開発計画など、数多くの情報が集録されています。
要録は在任中の手控を、東京府移管によって退官した作助自身が清書したもので、原本は小花家から寄贈され、東京都文化財の指定を受け小笠原村役場に保存されています。「研究者必携の基本文献」です。
この度、小笠原諸島史研究会によって和訳が完了した要録全四篇を、悠雲舎が復刻版として頒布、皆様にお届けすることになりました。
◆『小笠原島要録』記録内容
初 編 明治6年12月から明治9年12月
第二編 明治9年12月から明治10年12月
第三編 明治11年1月から明治11年12月
第四編 明治11年12月から明治13年11月(終)
付 録 『豆嶼行記』(国立国会図書館蔵)
全編に、小笠原諸島研究の概括的な解説を付記していますが、小笠原研究に携わる皆さんにとって不可欠の情報です。また、第四編に付録として収載した『豆嶼行記』は、文久期の小笠原に派遣され、ほぼ一年間在島した医師で本草学者の阿部檪齊(友進)の貴重な日記です。
一般研究家の他、公立図書館、大学図書館、研究機関に必置の基本文献です。