金融ブックス [金融コラムス・バックナンバー]

金融コラムス・バックナンバー

2007.10.16

「 アダム・スミスに学ぶ 」

「よーく考えよう。お金は大事だよ!」。耳に残るテレビコマーシャルのフレーズだ。バブル期には、人は「お金は次に新しいお金を稼ぐために大事だ」と何の疑いもなくそう思っていた。孔子は「君子は金を惜しむ。用いるところあればなり」といったが、昨今の世情・政界を見るに「悪人は金を盗む。用いるところあればなり」とでもいいたい。

 経済学の始祖として知られているアダム・スミス(1723~90年)。18世紀に生きたスコットランド生まれのこの偉大な人物は単に経済学ばかりではなく、広く、社会・人文科学に影響を与えた道徳哲学者である。主著『国富論』と並んで『道徳感情論』というもう一つの大著があるが、あまり知られていない。実はこの著作こそが『国富論』の生誕につながったといわれている。

『道徳感情論』には、スミスが期待した「慎慮の人」という人間像が出てくる。慎慮の人は努力家で誠実、自分の収入内で生活し、たとえ小さくても継続的な蓄積によって、日に日に良くなっていく境遇に満足する人々のこと。冒険的でも政治的でもない。この人々こそが社会発展の基礎を担うといっている。

 最近、近畿日本ツーリストのクラブツーリズムが人気だ。旅行人口の落ち込みに悩んだ同社が10年前から企画。これまでの高価でゴージャスなグルメ旅行とは一味違う。小さくても、継続的に得たお金で、人生を豊かに生きようとする人々の需要にはピッタリだ。

 スミスは、制度改革だけでは済まない人間の本性そのものの問題に取り組んだ。その先見の明に脱帽。